北欧のミッドセンチュリーデザインを率いた、巨匠デザイナー、タピオ・ヴィルカラ(1915-1985)。
ガラス、木、金属、プラスチック。
デザイナーであり、彫刻家でもある彼が触れると、ありとあらゆる素材が心揺さぶる形になった。まるで、手のひらから一輪の薔薇を生み出すように。
「フィンランドのレオナルド・ダ・ヴィンチ」。いつしかそう呼ばれるようになった。
1950年代からスターデザイナーの階段を駆け上がり、戸惑いと疲弊の末にたどり着いた、北限のラップランド。自然とシンクロしながら、世界で最も美しい形を追い求めた。
私たちは今、この本をたずさえて向かう。
最も美しい形が生まれる、その源泉へ。
Book photo: Kei Maeda
ABOUT THIS BOOK
フィンランドデザインの巨匠タピオ・ヴィルカラ
そのエッセンスがすべてこの一冊に
北欧デザインを愛する日本でも根強いファンが多いタピオ・ヴィルカラ。
建築家アルヴァ・アアルトの次世代として、フィンランドのデザイン界を牽引したデザイナーです。
デザイナーであると同時に彫刻家でもあるヴィルカラは、自然からそのまま形を取り出したような、見る者の心を揺さぶる作品を生み出しました。
それから半世紀が経ち、ふたたび「自然から発想するクリエイション」「工芸的なアプローチ」「アートとデザインの融合」など、ヴィルカラを再評価する機運が高まっています。
2021年11月に発行する『タピオ・ヴィルカラ』を通じて、ヴィルカラの功績や精神性を、今こそ正しく、インパクトを持って紹介します。
p.199 Portrait photo: Maaria Wirkkala
40年前の図録を復刻
ビジュアルで感じるデザインの源泉
本書は、フィンランドのデザイン界を牽引したデザイナーであるタピオ・ヴィルカラ(1915-1985)が自ら監修した本『TAPIO WIRKKALA』を復刻したものです。この本は、1981年にロシアで行われた自身の回顧展のためにフィンランド工芸デザイン協会から出版されました。
なぜ、日本語で初となるタピオ・ヴィルカラの本として、40年前の本を復刻することにしたのか。それは、ヴィルカラ自身が監修し、生前最期に出版を許可した本だからです。
プロダクトデザインから彫刻、アースワークまで多彩な領域で膨大な仕事を残しながら、ヴィルカラはそれらについてほとんど語ることはありませんでした。
しかしこの本では、ヴィルカラの創作と思考のエッセンスを28のテーマに分け、自身が撮影した写真やスケッチなど400点以上ものビジュアルを通して、デザインの源流をたどり、精神性に触れることができます。
p.152 Photo: Alfred Gossler
40年の時を超えて
ヴィルカラを知るための日本語テキスト
復刻にあたり、写真集やアートブックを得意とする藤原印刷の高精細スキャン技術により、原書『TAPIO WIRKKALA』を1ページずつ複写。40年前の手作業による印刷の味わい、大胆なトリミングや裁ち落としの雰囲気までも、当時のままを残しています。
付録には、各章の解説およびペッカ・スホネンによる論文の日本語訳を収録。
さらに、原書の編集とデザインを担当した建築家ユハニ・パッラスマー、写真を撮り下ろした映像作家・写真家のピルヨ・ホンカサロ、1950年代からのヴィルカラの活躍を間近に見てきた武蔵野美術大学・島崎 信名誉教授によるロングインタビューを掲載。
公私ともにヴィルカラをよく知る人物が、原書が出版された背景や、デザインの本質、人間ヴィルカラの知られざる一面まで存分に語ります。
「タピオはクラフツマン、工芸の巨匠であったということです。 彼は卓越した描き手であると同時に、ガラスを吹くこともでき、木工、彫刻、金工や銀細工の名手でもありました。」
― ユハニ・パッラスマー(建築家、ヴィルカラの親友)
「彼の手は生命体のようです。 その指先で、私たちに別の宇宙があることを示し、そこへ導いてくれる宇宙飛行士のような存在です。」
― ピルヨ・ホンカサロ(映画監督、ヴィルカラの親友)
「なぜ今、タピオ・ヴィルカラか。 僕は、今がベストタイムだと思いますね。 ものごとを深く耕すということから縁遠くなっている時代でしょう。 そういうときに、ヴィルカラのものはとても新鮮で、心に響く内容をもっていると思う。」
― 島崎 信名誉教授(武蔵野美術大学)
TAPIO WIRKKALA
タピオ・ヴィルカラ
1915 - 1985
1915年フィンランド南部の港町ハンコに生まれ、ヘルシンキで育つ。美術工芸中央学校で彫刻を学び、46年にイッタラ社のガラスデザインコンペで優勝、以後デザインを提供する。
50年代はじめミラノ・トリエンナーレにおけるフィンランド会場の展示デザインを手がけ、自らの作品と共にグランプリを受賞。1950年代後半はレイモンド・ローウィ事務所、アールストローム社のデザインオフィスA-studioを経て、1966年にデザイン事務所を設立。フィンエアー社やローゼンタール社など多数の企業にデザインを提供し、世界各国から招かれて個展を開催。プロダクトだけではなく彫刻やグラフィック、建築デザインまで精力的に手がけた。ラップランドにサマーハウスを所有し、そこでのインスピレーションが作品に大きな影響を与えた。1985年没。
妻は、セラミック・アーティストのルート・ブリュック(1916 - 1999)。
p.133 Portrait photo: Maaria Wirkkala
AVAILABLE NOW
2021年9月10日より、ブルーシープウェブサイトで予約受付を開始します。
『タピオ・ヴィルカラ』
2021年11月1日 発行
A4版変形、原書複製210ページ+日本語オリジナルページ
税込5,500円
ISBN: 978-4-908356-28-5
企画・構成:いまむられいこ
翻訳・編集:山口敦子(岐阜県現代陶芸美術館 学芸員)
デザイン:前田 景
印刷・製本:藤原印刷株式会社
発行者:草刈大介
発行:ブルーシープ
ウェブデザイン:VEHICLE